伝統技術とデジタルツールを使う、ハイブリット作陶家 ~器とデザイン 宮崎雄太さん~

佐賀県有田町の内山地区は、かつては「有田千軒」と言われるほど栄えた器の街。
そのメインストリート沿いにある「赤絵座」は、陶芸家の独立支援の場として、この街の期待を背負った若手の作家さんに工房兼ギャラリーとして提供されている場所です。

古い建物が並ぶ風情のある通りでひときわ目を引くスタイリッシュな看板を掲げた外観でした。

この赤絵座で現在作陶を行うのが器とデザインの宮崎雄太さん。
古い引き戸を開けると、アシンメトリーに片側を刈上げたヘアスタイルの宮崎さんが笑顔で出迎えてくれました。

宮崎さんは陶芸をメインに、デザイナーとしても活躍するクリエイター。
ご出身は福岡県の久留米市で、東京で8年間グラフィックデザイナーとして働いたのちに、この土地で作陶を始めました。

陶芸家として発表した最初の作品はこのフリーカップ。このトーンをほかの器にも広げ、宮崎さんの世界観をつくりだしています。

作られている器は研ぎ澄まされていますが、ひとことお話を始めると物腰のやわらかいやさしい人柄であることがすぐにわかるはずです。

デザイナーから転身したわけ

さて、そんな宮崎さんにまず最初に伺ったのは、なぜグラフィックデザイナーから陶芸家に転身したのかということ。

「デザイン事務所で6年働いて、独立してからは2年働きました。南青山に住みながら働き、いろいろな企業のパッケージデザインなどに関わらせてもらって刺激的な毎日でしたが、あるときふと、受け身の仕事に疑問を持ったんです」

デザイナーの仕事の多くは、企業から依頼されてデザインをつくること。それはクライアントの「こうしてほしい」「こんなものをつくってほしい」に応えることです。相手の希望に沿ったものをカタチにするその仕事は、時にはミリ単位で修正があることも。もちろんそれもおもしろい仕事に変わりはありませんが、宮崎さんはもっと自らのクリエイティビティを発揮する仕事がしたくなったそうです。

「ものづくりをしたいという気持ちが強かったので選んだ仕事でしたが、自分のやりたいこととは少し違うなと。そんなときに出会ったのが陶芸でした」

宮崎さんがつくるのは、ほとんどが白と黒のスタイリッシュな器。

有田は実家から近く、住み慣れた九州であったこと、自分の手を動かしてものづくりがしたいこと、つくるなら生活に密着した「普段使いのもの」をと考えたこと。
その結果、家具と器に行き着き、最終的にひとりで完結できる陶芸の分野へ足を踏み入れたそうです。

その後の行動はスピーディー。有田窯業大学校に入学し、2年間有田焼づくりを基礎からしっかり学びました。そして、実力が認められ赤絵座に工房を構えて1年半。その歩みはとても順調に見えますが、「窯業大の卒業生や肥前地区では同年代の活躍している人がたくさんいるので、僕ももっと頑張らなくては」と謙虚な姿勢です。

「僕がつくる器は、華やかではないですし、単品と言うよりは群で魅せるスタイルです。質感も大切にしていて、これも実際に触ってもらってわかってもらえるもの。地道にやっていこうと思います」
そんな客観的な分析ができるのはデザイナー出身ならではかもしれません。

「こんな器をつくってほしい」という注文をうけることもしばしばあるのだそうです。用途に沿った大きさや形などざっくりとしたイメージを伝えてもらってからは、宮崎さんいわく「あとは感じよく仕上げます」とのこと。

「焼き物は2つ同じものはつくれないのが魅力。僕のつくる器のテイストを気に入って注文してくれるのがとてもうれしいです」

デジタルと手作業の”いいとこどり”

そんな宮崎さん、作陶法もデザイナー出身であることが活かされていました。

まずは「こんなものをつくろう」と、アイデアを紙に描きます。これは他の作家さんも行っているごく普通のプロセスですが、その後宮崎さんはデザイン画をパソコンに取り組み、グラフィックデザインをつくる要領で、デジタルデータに落とし込みます。

有田駅前カフェ「Café hestia」のテイクアウトコーヒーで使われているタンブラーの原案となったもの。宮崎さんのデザインです。

焼き物は、窯で焼くと一定の割合で縮むという性質があります。
デジタルツールに落とし込む1番目の理由が、器用のへらとトンボと呼ばれる深さと直径を測る道具を作るためです。
これにより、作る段階の拡大が容易になります。
2番目に器の曲面などのラインをかくにんしながら微調整できる点があります。
3番目にすべての作品の設計図がデータとして残っているため、時間が経ってからでも忠実に同じものをつくることができます。

伝統の技法を使いつつも、現代的なツールも使う。よいところをそれぞれ取り入れるハイブリッドなスタイルです。宮崎さんの作るものは、スタイリッシュさと手作業のあたたかみのどちらも伝わってきます。それは、そんな柔軟なつくり方も影響しているのかもしれません。

気軽に使ってほしいから、もし割れたらまた買える価格帯で

おしゃれなデザインかつサイズや重さがちょうどいいと評判のラーメン鉢は人気商品の1つです。

宮崎さんが意識しているのは、たくさんの人が毎日つかえる価格帯の器をつくること。
毎日の暮らしにつかえるものをつくりたいという思いは、そんなところに反映されています。

「割れたからまた買おうと思ってもらえるのが目標です。そのためには、見た目はもちろん価格設定も大切にしたい。今はまだ、僕の器を買ってくれるのは30~40代の器好きな方たちが一番多いのですが、ゆくゆくはもっと若い世代の人たちにも気軽に使ってもらいたいです」と、展望を語ってくださいました。

有田焼や唐津焼ではなく「お好み焼き」

ところで、宮崎さんがつくる器は有田焼なのでしょうか?
そんな疑問を投げかけたところ、「よく聞かれるんです(笑)」との第一声。

「有田の窯業大学校で技術を学んだので技術は有田焼です。でも細かいところは違うかもしれませんし、ジャンルやカテゴリーにはこだわりはないので、そんなときはみなさんのお好みで決めてもらえたらという思いから”お好み焼きで”と答えています」と、笑いながら教えてくれました。

つくり方に始まり、さまざまなことに対して柔軟な考え方を持つ宮崎さん。「こうでなければいけない」というところがなく、自由で心地よい様子は作品にも表れています。そんな姿勢でつくられているからこそ、デザイン性が高いのに肩ひじ張らずに日常使いできる食器になっているのかもしれません。

工房内も整理整頓が行き届いていました。ツールはラベルを貼った引き出しに収納されていて、すっきりと片付けられています。

これからも、柔軟に

「これからは、クラウドファンディングなども活用して、新しいラインをつくりたい」と今後の抱負も語ってくれました。デザインの仕事のノウハウを活かして新しいコトを企画しているそう。有田の街に、次はどんな風を吹かせてくれるのかわくわくします。

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赤絵座に工房を持てるのは3年間と期限が決まっているので、あと1年ちょっとで別の場所へ移転して完全に独立しなければなりません。「窯をどこに持つかなど考えますが、なるべく制約のないところでつくりたいですね」と、独自のスタイルは崩さないようです。

赤絵座では絵付けやろくろ挽きの体験も随時受け付けています。宮崎さんにご興味がある方は早めに訪れてみてください。宮崎さんならやさしく丁寧に教えてくれるに違いありません。


問い合わせ先

器とデザイン 宮﨑雄太
〒844-0006 佐賀県西松浦郡有田町赤絵町1-2-18
email:uturn_m@me.com
website:http://utsuwatodesign.jp/