都会の暮らしにもマッチするスタイリッシュな唐津焼 ~白華窯 吉永サダムさん~

吉永サダムさんの工房「白華窯(はっかよう)」は佐賀県伊万里市内にあり、すぐ近くは有田町という立地です。そしてつくるのは有田焼や伊万里焼に多い磁器ではなく、陶器である唐津焼。ご本人は地域や焼き物の種類の名前にこだわらず、「吉永サダム」という自らの名前で活動をしています。

この窯でつくられる焼き物はスタイリッシュな印象のモノトーンを基調としながらも、土のぬくもりを感じるやさしい風合いが特長。「作家もの」として目の肥えた器好きな人たちからはもちろん、若い世代の器ビギナーからも人気があります。

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ジャズ音楽が流れる工房は、作品である焼き物のほかに古い日本家具やアンティークのストーブなどが並んでいます。

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外の景色は山と畑というのどかな環境の中にありながら、一歩入るとそれを忘れてしまいそうな空間に、サダムさんのセンスの良さがうかがえます。ここは古い日本家屋をリフォームして使っているそうで、もともとはサダムさんのおじいさんが趣味で栽培していたみかんの倉庫だったそうです。

サダムさんの作品の間に味のある置物が置かれていたりと、ぐるりとまわってみるだけでもしばらく楽しめます。

絵を描きたい想いが陶芸に導いた

そんなサダムさんが陶芸家として作陶する現在に至るまでには、「絵を描くことが好き」という一本の道を、少し寄り道しながらもそれずに歩いてきた経緯があります。

「陶芸家になりたいと思ったことは実はなかったんですけどね」と話すサダムさん。大学は経済学部で学びましたが、美術の先生になりたいと思うようになったとか。ご両親をはじめまわりに学校の先生が多いこともあり、20代はじめにはご自身もそんな未来を思い描いていたそうです。

しかしご両親は少子化の影響で教職の道は難しいのではないかと考えそれに反対。代わりに勧められたのが有田の窯業大学校でした。

「有田焼には絵付けもあるし、それなら大好きな絵を仕事にできると胸をはずませ入学したんです。でも、やっていくうちに人がつくった器に絵を描くのではなく、器から自分でつくりたいと思うようになって。それからは窯元に修行に出て技術をさらに身につけて、ここで独立して今に至ります」

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最初こそ、そういった理由で陶芸の道に足を踏み入れたサダムさんですが、「今はどっぷりはまっている」と断言。「もっともっと」という気持ちが年々強くなっているそうです。

今はまだ、夢の途中

サダムさんを魅了する陶芸。どんなところが魅力なのでしょうか。

「焼き物づくりは、過去の自分を客観的に見ることができるんです。当時は最高のできだと思った5年前の作品も、今見るともっとこうしたほうがいいという箇所がたいてい見つかる。それは自分への戒めとして未来に活かす糧になります。過去の作品を通して感じる自分の成長はやはり嬉しいものです」

ろくろ台の目の前に大きな鏡がある理由を伺うと「ナルシストだからじゃないですよ(笑)」と。 ここに鏡があることで、作品を遠目からチェックすることができるのだそうです。

ときには作品に見える過去の自分に恥ずかしさを覚えることもあるそうです。「昔はただただ恥ずかしいだけだったけれど、最近は『そんな過去の俺かわいいな』と思ったりもします」と笑います。

そして、キラキラとしたまなざしで「だから今もまだ、夢の途中にいます」と語ってくれました。美しいフォルムで、持ちやすく使いやすい器をつきつめたい。創作意欲は、どんどん高まっているそうです。

「すべて捨てる」を経て現在のスタイルに

白華窯という名前の由来は、白い化粧土を使った「粉引」をメインに作陶するから。窯の名前はその土地の住所をつけるケースが多いのですが、「中里」という土地名は唐津焼の名門一家の苗字でもありそれを付けるのは恐れ多かったという理由もあるそうです。

道のりが平坦ではなかった時期もありました。陶芸を初めて5年ほどたったころ、コンテナ数個分にも及ぶすべての作品を捨てたこともあったそうです。

「作風が似てるねとよく言われるほど、当時は師匠の作品をマネてつくっていただけだったと思うし、売らなくては、稼がなくてはと躍起になっていたんです。そんな中、東京や岐阜に武者修行と称して日本中の焼き物を見に行ってこれではダメだと痛感しました。つくりたいものが漠然としていたし、自己満足だったんですよね」

すべてを捨てたあとは、気持ちを新たに新生「吉永サダム」として再出発。つまり現在の作品はすべてそれ以降のものになります。

大きさをはかるための「トンボ」は1つ1つの器ごとにミリ単位で調整されています。

「今は、マンションに住んでいる都会の若い人たちでも使いやすい焼き物をつくっています。カフェで使うような食器を自宅でも楽しんでもらえたらいいなという気持ちもあるので、テイストやサイズ感はそんなコンセプトにしています」

そんな確固たるイメージのもと、“コーヒーカップは180㏄入るサイズに”など1㎜単位での微調整をしているほどなのだとか。そうやってつくられているからこそ、サダムさんの作品には見た目の素敵さに加えて、使いやすさが備わっています。

唐津のカフェ「caffe Luna」で使われているのはほとんどの器がサダムさんの作品で、コーヒーカップは「かわいい」と女子ウケも抜群なのだとか。ここでコーヒーを飲んで、その使い心地や見た目に惚れ込んでくれたお客さんもたくさんいるそうです。

caffe Lunaでも使われているコーヒーカップ。ぽってりとしたフォルムは手に優しくなじみ、コーヒーを飲んだときのほっとする気持ちをより高めてくれます。

存在感のある一輪挿しで花のある暮らしが叶う

また、器だけでなく花器も豊富につくっているのが「吉永サダム」の特徴のひとつでもありますが、これにも都会のマンション暮らしにマッチするサイズ感を意識しています。

「こっちの人は、庭にいくらでも花が咲いているから、さっと摘んで家中に花を飾るのが普通なんですけど、都会では花は買うものだったり贈られるものでしょ。花器はハードルが高いようですね。だから今は大きな花器より一輪挿しを多めにつくっています」

ほんの1本の花でも美しくいけることができる一輪挿しがあれば、花のある暮らしはぐっと身近になります。サダムさんの花器は、都会に暮らす若い人たちにそんなライフスタイルを提案する一助にもなっているようです。

人との出会いは、器をつくる醍醐味のひとつ

器づくりにおいてサダムさんが魅力に感じることはほかにもあり、それは「人との出会い」だそう。自分の器を好きになってくれる人とは、何かしら仲良くなれる理由があるはずと言います。

「だって、街で突然知らない人に話しかけたら変な人だと思われるでしょ(笑) 。でも器を通してなら、すぐに打ち解けられる。今までに何十人もの人とそうやって出会ってきました。器をつくる理由のひとつといっても過言ではありません」

器を通して出会ってきた人のお話をするときの表情は、楽しかったことを話す少年のよう。友達のことを心から大切にしていることがありありとわかります。陶芸関係の仲間のとても多いようで、ときには窯焚きの手伝いに夜通しででかけることもあるそう。

「唐津焼の作家さんはいい意味で、お互いにライバル意識を持っていないんですよね。自分が受けた注文で、ほかの作家さんがつくったほうがいいと思ったら紹介するし、逆に紹介されることもあります。大切な仲間です」

こちらの絵は仲間の一人が描いたものだそう。「病気を患い手がうまく動かない中、左手で描いてくれた大切な絵。彼の回復を心から願っています」と、お話してくださいました。

ごはんを一緒に食べたりテニスをしたりと、仲間とわいわい過ごすことも多いそう。でも、この工房でろくろをひくときは一人です。

「器をつくっているときはいつも”こいつをもっと魅力的にしてあげるにはどうしたらいいだろう”と考えながら、その作品とだけ1対1で向き合います。そういうメリハリは大切にしているほうですね」

普段はジャズミュージックやラジオを流すことが多いそうですが、ここぞという作品と向き合うときはクラシック派。お気に入りはバッハだそうです。

 誰でも、いつでも来て欲しい

出会いを喜びと考えるサダムさんですから、白華窯への来訪はいつでも大歓迎だそう。

「僕の作品になにかよいものを感じるならば、すでにシンパシーがあるということ。窯元に行くのはハードルが高いかもしれませんが、うちはそんなことないです」ときっぱり。

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ギャラリーはなく、工房のあちこちに作品が置かれています。その中から気に入ったものを探してもらうのだそう。宝探しのようですね。そして、人なつっこい笑顔でサダムさんが面白い話をたくさんしてくれることでしょう。

「お近くにお越しの際には、ぜひいらしてください」とおっしゃっています。気軽な気持ちで訪れてみてください。


問い合わせ先

白華窯
〒848-0034 佐賀県伊万里市二里町中里甲477-1
TEL:090-4988-5956